「笑顔」と「くやしさ」を胸に更なる「頂」へ。

 令和7年6月21日、22日に東京都・東京大学駒場地区キャンパス第2体育館にて、第118回関東学生パワーリフティング選手権大会が行われた。女子63㎏超級に出場したボディビル・パワーリフティング部・相原百香(2年)は、過去の自分を超えるべく本大会に挑んだ。

 パワーリフティングとは、スクワット・ベンチプレス・デッドリフトをそれぞれ3回行い、各種目で挙上した最高重量の合計で成績が決まる競技である。

 試合前、相原は「スクワットが一番の得意種目」と語った。その言葉の通り、スクワットでは第2試技に115㎏のバーベルを上げ切った。その瞬間、会場から大きな歓声が沸いた。しかし、第3試技ではバーベルを上げ切ることができず、失敗に終わってしまう。それでも彼女は決して下を向くことなく、次の種目へと向かった。

 ベンチプレスでは、これまで苦手だった胸上げの動作を克服し、フォームと呼吸のタイミングを修正したことで見事に成功した。「過去の大会で成功体験を積み、苦手意識が薄れたことが成功につながったと思う。自分の成長を実感できて嬉しかった」と喜びに満ちた笑顔で振り返った。

 最後の種目、デッドリフトでは疲れが見える中でも集中力を切らさずに挑んだ。第3試技は昨年の全日本学生パワーリフティング選手権大会(以下、全日本インカレ)で失敗した140㎏に再度挑戦したものの、惜しくも上げ切ることはできなかった。相原は「本当に悔しかった」と声を詰まらせ涙を浮かべた。

 結果として、スクワットで115㎏、ベンチプレスで62.5㎏、デッドリフトで132.5㎏、トータル310㎏を記録し、堂々の準優勝を果たした。さらに、大会を通じて最も印象的な新鋭に贈られる新人賞も獲得した。それでも、相原は「優勝を狙っていたため、応援してくれた先輩や仲間の期待に応えられなかった不甲斐なさで打ちのめされそうになった。この悔しさが私のエネルギーになる」と話した。その言葉からは次なる挑戦への決意を感じさせた。

 顧問・岡田隆先生は、相原の努力をこう評価した。「本学のボディビル・パワーリフティング部は体を見せるボディビルと、上げた重量を競うパワーリフティングという異なる競技で構成されている。男子のボディビル志望者が大半を占めているこの部活で、女子のパワーリフティング選手はやりづらい部分もあるだろう。その中でも自身と向き合い、技術面、体重管理、メンタル面の三拍子が着実にかみ合い、今回の結果につながった」と述べ、健闘をたたえた。競技環境についても「本学は強豪校の一つだが、関東には他にも実力校がひしめいている。どの大学からも優勝者が出る可能性がある厳しい戦いだからこそ、学生同士が切磋琢磨できる。そこで得られる友情や経験は、社会に出ても彼女たちの大きな財産になるだろう」と語った。

 相原は「まずは同㎏超級で全日本インカレを制覇し、トータル320㎏、さらには400㎏を目指して計画的なトレーニングと食事管理、メンタル強化を徹底する。競技を通じて忍耐力や継続力、人間的な謙虚さも磨いていきたい」と語り、アスリートとしてだけでなく一人の人間としての成長も誓った。また「パワーリフティングの技術面や精神面の奥深さを多くの人に知ってもらい、競技自体を盛り上げたい」と語り、競技普及への意欲も見せた。

 最後にいつもの屈託のない笑顔で「応援してくれる皆さんの期待に応えられるよう、もっと強い相原百香になります。次の大会もぜひ見ていてください」と呼びかけた。

 笑顔と悔しさを胸に更なる頂へ、日体大の『未来のエース』相原百香は、高みを目指して歩みを止めない。

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